脂質異常症

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脂質異常症とは

一般的には「血液がドロドロの状態」、それが脂質異常症といってもいいでしょう。血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪(トリグリセライド)などの脂質(血清脂質)が異常に多くなる、または、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が少なくなる病気です。以前は、中性脂肪、悪玉コレステロールの値を基準とした「高脂血症」という名称が一般的でしたが、それに善玉コレステロールの値を基準として加えたものが「脂質異常症」です。健康診断の血液検査などで発見されることがほとんどです。

健康診断などでコレステロール、中性脂肪が多いと指摘された方へ

健康診断でコレステロール、中性脂肪が多いと指摘された方は「脂質異常症」の予備軍です。厚生労働省による『平成23年 国民健康・栄養調査報告』によると、40代、50代の男性の約3人に1人がLDLコレステロールの基準値(140mg/dl以上)を超えており、さらに、30代以上の男性の約40%が中性脂肪の基準値(150mg/dl以上)を超えています。50代の男性に絞ると、約半数が中性脂肪の基準値を超えています。

中性脂肪は生きるために必要なエネルギーのひとつとして、内臓脂肪にたまりやすいことが知られています。しかし、飽食の時代では、内臓脂肪に中性脂肪がたまり過ぎて脂肪組織からあふれてしまい、血管や心臓・脳などに作用して心筋梗塞や脳卒中の原因になるとして注目されています。

脂質異常症は、自覚症状のないまま静かに進行していき、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす恐ろしい病気です。サイレントキラーといわれています。脂質異常症は生活習慣病の中でもっともそのような病気をおこしやすいといわれています。一度、脳梗塞や心筋梗塞などが引き起こされてしまった場合は、一生、その病気と付き合っていくことになります。手足の麻痺・言葉の障害・寝たきりあるいは命に関わることも稀ではありません。
「忙しいから再検診は時間が空いたときに行こう」とは思わないで下さい。

  • 身体が重く感じられる方
  • 疲れが一向に取れない方

それは一時的な疲労ではない可能性があります。

脂質異常症による合併症は、ある日突然、襲い掛かってきます。
早めに受診して医師の指導を受けることが大切です。

脂質異常症の原因

脂質異常症は現代病のひとつであり、主な原因は食生活にあります。

食事の欧米化によって、肉類、油物中心の食生活によるものや暴飲暴食、喫煙、アルコールの摂取、運動不足などが要因(危険因子)と考えられています。その他、遺伝的要因もあります。

日本国内では、アメリカにおいてコレステロールの摂取制限が撤廃されたなどの理由から、血中のコレステロール濃度と食事との間に関係がないかのように報道されていますが、その情報をそのまま鵜呑みにしてはいけません。
アメリカが基準を撤廃した背景を簡単に説明すると、コレステロールの基準値を設けることで確かに油などを摂取する量は減りましたが、その分糖質の摂取量が増え、結果的には肥満が増加することになりました。
これを受けて、コレステロールのみを制限していても意味がないという判断のもと、摂取制限が撤廃されたようです。

脂質異常症の方は、今後もコレステロールの摂取に気をつけなければなりません。医師の指導のもと、食生活をきちんと改善しましょう。

診断

脂質異常症の診断基準(空腹時採血による数値)

コレステロール数値
高LDLコレステロール血症LDLコレステロール値140㎎/dl以上
境界域高LDLコレステロール血症LDLコレステロール値120~139㎎/dl以上
低HDLコレステロール血症HDLコレステロール値40㎎/dl未満
高トリグリセライド(中性脂肪)血症トリグリセライド値150㎎/dl以上

(日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2012年版より)

最近、診断の目安としてコレステロール値だけではなく、「LH比」も重視されています。LH比とは、「LDLコレステロール値÷HDLコレステロール値」のことです。たとえばLDLコレステロール値135mg/dl、HDLコレステロール値45mg/dlの場合、「135÷45=3」でLH比は3.0となります。LDLコレステロール値が正常であっても、HDLコレステロール値が低いと心筋梗塞を起こす例が多いため、予防のためには両方のバランスを示す数値(LH比)が良い目安となります。LH比が2.5以上だと動脈硬化や血栓のリスクが高くなります。当クリニックでは、高血圧や糖尿病がある場合、あるいは心筋梗塞などの病歴がある場合にはLH比が2.0以上を治療を始める目安としています。

脂質異常症の治療方法

脂質異常症の治療法は、基本は食事療法と運動療法であり、この2つの治療法を長く続けていく必要があります。

食事療法では、動物性脂肪を含む食品摂取制限し、食物線維を多く含む野菜などを積極的にとり、アルコール制限を行います。また、運動療法では一日30分程度の継続できる有酸素運動を心がけ継続してもらいます。

食事療法で、脂質が改善しない時や、すでに動脈硬化による心筋梗塞、脳梗塞などの発作を起こしている場合などに主にLDLコレステロールを下げる薬や、トリグリセライド(中性脂肪)を下げる薬による薬物療法が行われます。

治療目標はLDLコレステロール値を下げ、HDLコレステロール値を上げ、総コレステロール値および中性脂肪を下げることにあります。LH比が2.5以上だと動脈硬化や血栓のリスクが高いため、「ほかの病気がない場合は2.0以下に」、「高血圧や糖尿病がある場合、あるいは心筋梗塞などの病歴がある場合には1.5以下に」を治療の目安としています。

実際の治療方針については、患者さまごとのリスクを細かく考慮しながら、医師が判断しますので、ぜひご相談ください。