▷院長ブログ「世界初「ジタン系」の片頭痛治療薬「レイボー」」2022/6/11(土)
▷院長ブログ「片頭痛予防の新しい注射薬「アイモビーグ」はじめました💉」2021/9/8(水)
▷院長ブログ「片頭痛予防注射「エムガルティ」はじめました💉」2021/6/14(月)
日常生活を脅かす、つらい「片頭痛」
片頭痛に悩んでおられる方は多く、「仕事に集中できない」「次に来る発作が不安になる」「人との約束を遠ざけてしまう」など、日常生活にも支障をきたしてしまいます。
世界的なデータを見ても、日常生活に支障をきたす疾患の第2位となっています。
片頭痛の発作が起きた時にお薬(急性期治療薬)を飲むだけでは生活上の支障を十分に治療できない方には、予防療法が必要です。また、発作が起きた時の急性期治療薬を乱用してしまう場合も、「薬物乱用頭痛」を誘発してしまう危険性があるため、予防療法が必要です。
「片頭痛」予防療法のメリット
〇 片頭痛発作の回数や痛みの強さ、痛い時間が軽減される
〇急性期治療薬(痛くなった時に飲むお薬)の効き目が良くなる
◯片頭痛による日常生活への支障が軽減される
注射タイプの片頭痛予防薬
現在、日本で使える注射タイプの片頭痛予防薬は「エムガルティ」「アイモビーグ」「アジョビ」の3種類あり、当クリニックではすベてを扱っています。これらは、片頭痛発作が起こるのを抑えるために作られた、新しいタイプのお薬(飲み薬ではなく、注射薬)です。注射することによって、片頭痛の強さや片頭痛が起こる日数がへり、痛くなった時に飲む急性期治療薬を使う回数が減るという効果が期待されています。
在庫があれば、ご予約なしでも来院時に注射をすることが可能です。
(1)エムガルティ
エムガルティを注射する間隔
まず初回は2本注射して、お薬の血中濃度を上げ、安定した状態にします。その後、翌月からは、毎月1本を注射します。
エムガルティの費用
エムガルティの費用は、3割負担の方で、1本約13,500円です。そのため、2本注射をする初回は約27,000円かかり、翌月以降は約13,500円です。
エムガルティの副作用
副作用もありますので、ご確認ください。
(2)アイモビーグ
アイモビーグは、世界では最初に発売(2018年5月にアメリカで承認されて以降、世界の71の国や地域で承認されています)されたCGRP製剤なので、5年間の長期投与試験でも安全性が確認されています。片頭痛発作の回数が減り、発作の時に飲む頭痛薬を減らす効果が認められていて、お薬を使い始めて1年後には、64.5%の患者さんが片頭痛の日数が半減したという結果が出ています。
外部からの光や音、匂いといったなんらかの刺激によって、脳神経の一つである三叉神経の末端から片頭痛の発作に関与するとされるCGRPが放出されます。CGRPが、その受け皿であるCGRP受容体に結合すると、脳の血管を拡張させて炎症を引き起こし、片頭痛が起こると言われています。この、CGRPを受け取るCGRP受容体というのは、脳の中に広く分布しているんです。エムガルティは、エムガルティ自身がCGRPに直接くっついて、CGRPがCGRP受容体に結合するのを阻害するお薬でしたが、アイモビーグは、CGRP受容体の方にアイモビーグ自身がくっついて蓋をして、CGRPがCGRP受容体に結合するのを阻害するお薬なので、役割が違うんですね。
アイモビーグを注射する間隔
エムガルティは初回に2本注射しますが、アイモビーグは初回に1本ですみます。その後は、4週間ごとに1本を注射します。
アイモビーグの費用
アイモビーグの費用は、3割負担の方で、1本約12,500円です。
(※1本あたりの金額はエムガルディよりも安いですが、エムガルディは1ヶ月ごとに注射するのに対し、アイモビーグは4週間ごとに注射するため、1日あたりの金額は同じです。)
(3)アジョビ
アジョビは、4週間ごとに1本注射するか、12週間ごとに3本注射するか、患者さんのライフスタイルによって選べる特徴があります。忙しくて4週間ごとの来院が難しかったり、ご自宅がクリニックまで遠い方には合っているので、そういう方にはアジョビがオススメです。作用機序は、エムガルティと同じく、CGRPに直接くっついて、CGRPがCGRP受容体に結合するのを阻害するものです。
注射タイプの予防薬の対象となる患者さん
注射タイプの片頭痛予防薬の対象となるのは、片頭痛が1ヶ月に4日以上起こり、飲み薬の予防薬による治療が有効でないと判断された患者さんです。そのため、現在、片頭痛があって辛い方でも、まだ飲み薬の予防薬を飲まれたことがない方には、まずは飲み薬を処方します。
※妊婦・授乳婦の方、15歳以下の小児は安全性が確立されていないため適応外です。
まずは飲み薬タイプの予防薬から
片頭痛予防のための注射薬は、片頭痛の飲み薬の予防薬を飲んでみて、有用でないと判断した患者さんが対象となるため、まずは、以下の飲み薬によって様子をみます。当クリニックでは、院長の経験に基づき、デパケン®を使用することが多いです。お薬は、以下のようにたくさんの種類があります。
カルシウム拮抗薬(ミグシス、ワソラン)、β遮断薬(インデラル、セロケン)、抗セロトニン薬(ミグリステン、ぺリアクチン)抗うつ薬(トリプタノール、パキシル、ルボックス)、抗てんかん薬(デパケン)、ロイコトリエン拮抗薬(オノン、シングレア)、ARB(ブロプレス)
片頭痛は、経験のある方にしかわからない辛さで仕事や日常生活を脅かします。月のうち、何度も起こる片頭痛の発作に苦しんでおられる方、ぜひ、片頭痛の予防療法を始めませんか。まだ、飲み薬の予防薬を試したことがない方も、ぜひ、ご相談ください。
世界初「ジタン系」の片頭痛専用治療薬「レイボー」
現在、片頭痛の専用治療薬としては20年前に発売されたトリプタン系のお薬が主流で、痛みが有効に抑えられている患者さんは多い印象があります。しかしトリプタン系のお薬は、頭痛の原因物質が出るのを抑制する際に、一緒に血管にも作用して血管を収縮させるため、胸が苦しくなったり動悸を感じて、お薬を使うことができない患者さんも少なくありませんでした。レイボーは血管収縮への影響が少ないため、これまでトリプタン系のお薬が使えなかった患者さんには期待できると言われています。
レイボーは、頭痛の「改善度」だけではなくて「消失度」をみた試験で評価をしているため、「少し痛みがやわらいだ」ではなく「痛みが消えた」状態を期待できるお薬です。
また、飲むタイミングについても特徴があります。これまでのトリプタン系のお薬は「頭痛が起きたらすぐに飲む」ことによって頭痛を悪化させないようにすることが大切でしたが、レイボーは飲むタイミングが効果に影響しにくいお薬です。
そして、服用してから24時間後も効果が持続すると言われています。
ただ、血管への副作用は少ないのですが、脳の興奮を抑えて脳を休ませるお薬のため、眠気やめまいがでるという副作用が報告されています。そのため、レイボーの服用後は、運転は避けなければいけません。
この、新しいジタン系のお薬「レイボー」は、これまでトリプタン系のお薬が効かなかったり、副作用が出て使えなかった患者さんには、ぜひ使っていただきたいと思います。現在の頭痛薬の効き目に満足できていない方は、予防治療と合わせてご相談くださいね。