三叉神経痛

三叉神経痛(特発性三叉神経痛)

概念

三叉神経痛とは顔に痛みのでる病気です。顔の感覚(いたい、さわった、つめたい、あついなど)を脳に伝える神経が三叉神経ですが、この神経に痛みが起こり、顔を痛く感じるのが三叉神経痛です。

症状

三叉神経痛の顔の痛みにはかなり特徴があります。痛みは非常に強いものですが、突発的な痛みです。一瞬の走るような痛みで、数秒のものがほとんどで、ながく続いてもせいぜい数十秒です。数十分と続くような痛み、じりじりとした痛みなどは三叉神経痛ではないことがほとんどです。三叉神経痛では洗顔、お化粧、ひげそり、そしゃく(ものをかむ動作)などで顔に痛みが走ります。つめたい水をのむと痛みが走ることもあり、痛みで歯磨きができないこともあります。触ると痛みを誘発されるポイントがあり、上まぶた、鼻の横などを触ると、顔面にぴっと痛みが走るという場合は三叉神経痛の可能性が高いです。季節によって痛みが変動するのも特徴で、11月や2月に痛みがひどくなる方が多いです。

三叉神経には三つの枝があって一番目の枝がおでこ、2番目の枝が頬、3番目の枝が下あごにいっています。この枝の範囲に痛みがおこるのが特徴です。1本の枝にだけ痛みが出る場合と、2本以上にでることがあります。1番目と2番目(おでこと頬)、あるいは2番目と3番目(頬と下あご)というような分布の痛みが起こります。しかし、1番目と3番目というようにスキップして痛むことはありません。

診断

三叉神経痛の診断には、痛みの症状や病気の経過の詳しい聞き取りがもっとも大切です。この病気の診療になれた医師がくわしく問診することによって、かなり病気の診断がつきます。しかし痛みが典型的でない場合、診断が容易ではないこともあります。内服薬(カルバマゼピン)を試しに飲んで、症状が楽になる場合は、三叉神経痛の可能性があります。また脳MRIの撮影も有用です。三叉神経痛の数%は、脳腫瘍が原因で起こっています。また、三叉神経が血管で圧迫されることにより痛みが起こっている場合もあります。

治療

内服治療

三叉神経痛は内服薬がよく効く病気の一つです。カルバマゼピン(商品名、テグレトール®)というお薬で、8割以上の人で一時的には痛みが消失あるいは相当改善します。これはてんかんのお薬ですが、神経の伝達を押さえる、ということで痛みの情報が神経に走るのを押さえて、痛みを軽くします。バクロフェンというお薬もかなり有効です。このほかにバルプロ酸ナトリウム、フェニトインというお薬も時に有効です。バルプロ酸ナトリウムとフェニトインも、てんかんのお薬です。しかしカルバマゼピン以外は、効果には個人差があります。お薬の治療ではふらつきやねむ気などの副作用がときにでます。ふらつきや眠気は多くの場合、4-5日内服していると体がなれて楽になってきますが、どうしてもつらい時は、お薬の量や飲み方を工夫する必要があります。またお薬の副作用で、肝臓の機能がわるくなることがまれにありますので、血液検査をときどきする必要があります。皮膚に発疹が出た場合も、お薬による薬疹のことがあります。

手術治療

内服薬だけでは痛みが楽にならないという場合や脳MRIで脳腫瘍が見つかったときは手術を考えることになります。神経血管減圧術や脳腫瘍摘出術などの手術治療が必要になりますので、このような場合、関連施設の専門医をご紹介致します。

定位放射線治療

定位放射線治療は、脳の外から脳の限定した場所に強い放射線をあてる治療です。ガンマナイフ、サイバーナイフなどがこれに相当します。三叉神経に強い放射線をあてると痛みが軽くなる場合があります。6-8割の患者さんに有効であると言われています。手術治療に代わる方法でもあります。定位放射治療が必要な場合は、関連施設の専門医をご紹介致します。

三叉神経ブロック

三叉神経に直接局所麻酔薬などを注射して痛みをとる方法です。局所麻酔薬では麻酔がきれれば痛みが再発します。