骨粗しょう症

骨粗しょう症とはどんな病気?

 骨粗しょう症とは、骨の新陳代謝がうまくいかなくなり、骨がスカスカになり骨折しやすくなる病気です。骨は毎日、古い部分を溶かし(骨吸収)し、新しい骨をつくって(骨形成)して生まれ変わっていきます。このバランスがくずれ、骨吸収が骨形成を上回ると骨粗しょう症になります。体に必要な血液中のカルシウムが不足すると、骨に蓄えられたカルシウムが溶け出して不足分を補います。これにより骨の量(骨密度)が減ってしまい骨粗しょう症につながります。

骨粗しょう症を引き起こす危険性

 女性ホルモンのひとつであるエストロゲンは、骨形成をうながすとともに骨吸収を抑える働きがあります。特に閉経後の女性では、エストロゲンの分泌量が急激に減少するため骨粗しょう症になりやすくなります。思春期の極端なダイエットもエストロゲンの減少につながり将来の骨粗しょう症のリスクを高めます。喫煙は胃腸でのカルシウム吸収を阻害し、エストロゲンの分泌も抑えるため骨量不足を招きます。アルコールの過剰摂取も胃腸でのカルシウム吸収を阻害します。最近の研究では、コラーゲンの劣化や減少でも骨粗しょう症になることが明らかになってきました。コラーゲンの劣化や減少を防ぐためには、生活習慣の改善などが必要です。ステロイド剤の長期服用・関節リウマチ・糖尿病・慢性腎臓病・副甲状腺機能亢進症なども続発性に骨粗しょう症の危険性を高めます。

骨粗しょう症を放っておくと・・・

 骨粗しょう症を治療しないで放っておくと、日常動作や転んだ時の軽い衝撃で骨折をおこしやすくなります。一度骨折を起こすと、最初の骨折から1年以内に2度目の骨折を起こしやすくなります。骨折を起こしやすい部位は、腕の付け根(上腕骨頸部)、手首(橈骨遠位端)、背骨(腰椎)、太ももの付け根(大腿骨近位部)などです。骨折を繰り返し寝たきりになることもあります。

骨粗しょう症の予防

1)食事  カルシウムを含め栄養バランスのとれた食生活

1. カルシウムを多く含む食品:骨を強くする
  • 乳製品:プロセスチーズ・牛乳・ヨーグルト・小魚など
  • 大豆製品:木綿豆腐・厚揚げ・凍り豆腐など
  • 小魚・海藻類:ひじき・さくらえび・イワシ丸干しなど
  • 野菜:こまつな・ちんげんさい・切り干し大根など
2. 効率よくカルシウムをとる工夫:カルシウムの吸収を助ける
  • ビタミンD:イワシ・カツオ・マグロ・干ししいたけ・キクラゲなど
  • 日光(紫外線)を浴びることによりビタミンDを確保できます。
  • ビタミンK:納豆・ブロッコリー・ほうれん草・チーズ・レバーなど
3. 骨質を支えるコラーゲンの劣化を防ぐ
  • ビタミンB6:レバー・マグロ(赤身)・ニンニク・ゴマなど
  • ビタミンB12:サンマ・貝類(シジミなど)・レバーなど
  • 葉酸:のり・緑茶・枝豆・モロヘイヤなど
4・カルシウムの吸収をさまたげる栄養素
  • リン:インスタント食品・スナック菓子・炭酸飲料など
  • 食塩:漬物・加工食品・干し魚など

2)運動・体操

  • 骨と一緒に筋力とバランス力をアップ運動することで骨をつくる細胞が活性化して、カルシウムが骨に沈着しやすくなります。
  • まずは歩くこと(ウォーキング)から
  • 体操メニュー:よつんばい背中伸ばし・うつ伏せ背中伸ばし・あお向け片足上げ・片足体重かけ・かかと上げなど
  • 十分な注意と環境整備による転倒を防ぐ

検査法

1)骨密度(骨量)測定法

1. DXA(デキサ)方法

エックス線を用いて背骨や太ももの付け根の骨の量を測ります。

2. 超音波法

足のかかとの骨の量を超音波で測ります。

3. MD(エムディ)法

手指の骨の量をエックス線で測ります。

2)尿・血液検査

骨が壊れたり、作られたりする様子、血中のカルシウム濃度、骨にカルシウムを取り込むはたらきのあるビタミンKやビタミンD、女性ホルモンのはたらき具合などが尿や血液検査でわかります。

ビタミンD充足度の指標となる血清25(OH)Dの測定が、「原発性骨粗鬆症」を対象に健康保険適応になりました(ECLIA法)。ビタミンDの不足・欠乏は、骨折リスク、転倒リスクを高めるほか、ビスフォスフォネート製剤といった骨吸収抑制薬に対する反応性を低下させます。

3)レントゲン検査

骨が折れたり、つぶれたり、変形していないか、あるいは折れやすくないかなどを調べます。

診断

  • 骨折の既往:軽い衝撃で生じた骨折があれば骨粗しょう症を疑います
  • 骨密度測定:骨量については20~40歳の若年成人の平均値(YAM)との比較で診断されます。YAM値80%以上は正常、70%以下で骨粗しょう症と診断されます。

治療

1) 薬物療法

1. ビスフォスフォネート製剤 (製品名:リクラスト®︎など)

 骨吸収を抑え、骨量を増加させ骨折を予防する効果があります。毎日一回、週一回、4週一回、月一回飲むお薬があります。飲み方には注意事項があります。朝起きた時にコップ一杯の水でかまずに飲みます。飲んだ後は、約30分間、水以外の飲食はしない、横にならないようにする。週一回のゼリー状のお薬、年一回の点滴静注薬、月一回の静注薬、4週間に一回の静注薬もあります。

2. 抗ランクル抗体薬(製品名:プラリア®︎)

  骨を壊す働きを抑える効果があります。6か月に一回の皮下注射で投与します。血液中のカルシウムが減って、倦怠感や手足の震えなどがみられことがあります。これを防ぐためにカルシウム製剤、ビタミンD製剤を一緒に飲みます。顎骨壊死(下あごに多い)が発生することがあり、それが抜歯などにより発生率が高まることが報告されています。この薬を飲む前に歯の治療は済ませておく方がいいでしょう。

3. 副甲状腺ホルモン薬(製品名:テリボン®︎)

 週一回の皮下注射薬で、骨形成を強め、骨折を予防します。骨折の既往があり、骨折の危険性が高い骨粗しょう症に使用します。投与期間は24か月間です。

4. 活性型ビタミンD3製剤(製品名:エディロール®︎)

  骨の吸収を抑え、骨量を増やし、骨折を予防します。

5. 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:サーム)

 女性ホルモンのエストロゲンに似た薬ですが、乳房・子宮などに作用せずに骨に選択的に効く薬です。骨の吸収を抑え、骨量を増やす効果があります。

6. カルシウム薬とビタミンK2薬

 いずれも骨の栄養素であり、骨密度を上げる効果があります。

7. 抗スクレロスチン抗体 (製品名:イベニティ®︎)

 骨をつくりながら壊れるのを防ぐ効果があります。


2) 基礎治療:食事療法・運動療法