▷院長ブログ「自宅でできる簡単エクササイズ🏠」2020/6/22(月)
いつでも食べたい物が手に入る豊かな時代になり、肥満による健康問題が増えています。近年は欧米だけでなく、中国などのアジア諸国でも肥満が急増中です。日本では成人における肥満の割合は約30%。最近30年間の推移を見ると、成人男性の肥満が増え続けています。健康を支える上で肥満に対する対策が課題となっています。
日本における肥満の基準は「BMI(体格指数)25以上」と、内臓脂肪蓄積の指標となる「ウエスト周囲長 男性85㎝以上、女性90㎝以上」と定義されています。肥満の目安となるBMI(体格指数)は、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求められます
BMI=体重 (kg) ÷ 身長 (m)²
例:身長160cm体重68kgの場合 BMI=68÷(1.6×1.6)=26.6
最近では、内臓脂肪、皮下脂肪と区別しないで両方の質や量の異常を診ることが診療において重要であるといわれています。当クリニックでは肥満症の相談を常時、受け付けております。どうぞお気軽にご相談下さい。
高度肥満
日本人の成人でBMI35以上の高度な肥満の方は、0.2~0.3%といわれています。欧米と比べると少ないですが、日本人でも体重が100kgを超えている人も珍しくなくなってきました。今後、このような肥満度の高い人が増えてくる可能性があるため、新しい診断基準ではBMI35以上が「高度肥満」と定義され、診断や治療の対象と位置づけられました。
肥満症の診断に必須となる合併症
肥満症の診断に必須となる合併症は11種類あります。
- 耐糖能障害:Ⅱ型糖尿病など
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
- 脳梗塞:一過性脳虚血発作・脳血栓症
- 脂肪肝:非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・妊娠合併症:妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病
- 睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 整形外科的疾患:変形性膝・股関節症、変形性脊椎症、腰痛症など
- 肥満関連腎臓病
肥満に関連する悪性疾患
肥満に関連する脂肪肝のひとつで、お酒を飲まない人に発症する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は内臓脂肪と関連が深く、この病態から肝硬変や肝がんに進展することがわかっています。さらに、最近の研究において胆道がん、大腸がん、乳がん、子宮内膜がんは、肥満の人に発症や再発が多いと報告されています。肥満に関連する悪性疾患としては、胆道がん、大腸がん、乳がん、子宮内膜がんです。肥満はがんの発症にも関与するものであり、予防と警鐘の必要があります。
肥満症の治療の重要性
肥満は、脂肪組織が体内に過剰に蓄積した状態です。健康に問題がなければ治療の必要はありませんが、BMI25以上で、肥満によって合併症が発症したり、健康に問題が生じたりしている場合は「肥満症」と診断され、減量が必要になります。
体重の増加は日常生活でよく経験すること。スタイルの変化を気にする方は多いですが、蓄積した脂肪が病気を引き起こし、肥満症につながることは、意外に知られていないのではないでしょうか。
過剰な脂肪の蓄積は、さまざまな病気に近づいている状態ともいえます。これからはBMIの数値と一緒に起こりうる合併症なども意識して、肥満を予防していく時代です。
高度肥満者は社会的問題や精神的問題を抱えていたり、うつ病、統合失調症、摂食過剰症などの疾患を合併していることもあり、精神科専門の医師と連携して治療に当たる必要がある場合もあります。
肥満症の中には稀ですが脳下垂体腺腫によるものもあります。クッシング病といわれており、「中心性肥満」を呈します。満月様顔貌・おなかがぽっこりでるというような肥満です。若年女性で生理不順があり、このような肥満がある方は要注意です。当クリニック院長の専門分野ですので、ぜひ、ご相談下さい。
肥満症の治療
1. 体重測定の習慣化が肥満症治療の第一歩
まず3〜6ヶ月で現在の体重から3%の減量を目標としましょう。体重3〜5%の減少で脂質異常症、糖尿病、肝機能障害、高血圧などが改善することといわれています。
2. 治療の中心は食事療法と運動療法
基本的な食事療法
(1) 食べ過ぎないこと・飲みすぎないこと・間食を減らすこと
(2) 野菜類、海藻類などの食物繊維を多く摂取すること
(3) 脂っこいもの(揚げ物・天ぷらなど)を減らすこと
(4) 早食いの是正:よく噛んで食べること
肥満症の方はおおむね「早食い」です。よく噛んで食べれば、カロリーを多く摂取しなくても、満腹になることが証明されています。かむことによって脳内からヒスタミンが分泌され、このヒスタミンが視床下部にある満腹中枢に働きかけて満腹感を起こさせることがわかっています。
(5) 生活リズムの修正
朝食の欠食、夕食時間の遅延などは肥満の方によく見られる食行動パターンです。夜型のライフスタイルの定着は明らかに肥満リスクを増大させる一因となっています。規則正しい食生活を心がけましょう。
基本的な運動療法
運動に関しては、体調や生活習慣など個人差があるため、強度や量を調整しながら、無理なくできることから取り組むことが大切です。
以下は、厚生労働省による健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023による推奨事項です。
3. 薬物療法
保険診療
(1) 抗肥満薬:サノレックス
現在、日本で認可されている唯一の薬剤ですが、誰にでも使用できるというわけでなく健康保険適応は高度肥満症(BMI35以上)の患者さんです。
2週間処方が原則で少量から始め増量していきます。薬物耐性、依存性の問題があるため、使用限度は3か月です。
【作用】食欲中枢への直接作用及び神経終末におけるノルアドレナリン,ドパミン,セロトニンを介した機序により摂食抑制作用を示すとともに消化吸収を抑制することにより摂取エネルギーを減少させ,肥満を是正すると考えられています。
【適応】 食事療法及び運動療法の効果が不十分な高度肥満症(肥満度が+70%以上またはBMIが35以上)が対象です。
【禁忌】
- 本剤の成分に過敏症の既往歴
- 緑内障(眼内圧が上昇)
- 重症の心障害(症状悪化)
- 重症の膵障害(インスリン分泌抑制作用を有する)
- 重症の腎・肝障害(代謝又は排泄が遅延)
- 重症高血圧症(カテコラミンの昇圧作用を増強)
- 不安・異常興奮状態(中枢興奮作用を有するので興奮状態を増悪)
- 薬物・アルコール乱用歴(一般に依存性,乱用が起こりやすい)
- 精神分裂病(外国で高用量で精神分裂病の症状悪化の報告)
- MAO阻害薬投与中又は投与中止後2週間以内の患者(相互作用参照)
- 妊婦又は妊娠の可能性
- 小児
(2) 漢方薬:防風通聖散など
自費診療
当クリニックでは、保険診療でサノレックスを処方できる高度肥満には該当しない方にも、自費診療にて抗肥満薬を処方いたします。(ダイエット外来)
初回の診療時のみ、相談料として3,000円がかかりますが、次回以降はお薬代のみで処方いたします。
サノレックス
食欲中枢への直接作用及び神経終末におけるノルアドレナリン、ドパミン、セロトニンを介した機序により摂食抑制作用を示すとともに消化吸収を抑制することにより摂取エネルギーを減少させ、肥満を是正すると考えられています。
一錠 400円
ジャディアンス
過剰な糖分を尿から排出する薬です。体重減少の効果は高いので、炭水化物をやめられない方にお勧めの治療薬です。脂肪を減少させる効果もあります。体重は延々と減り続けるのではなく、ある程度のところでプラトーに達します。
一錠 10mg 300円
一錠 25mg 600円
リベルサス
血糖値を下げるインスリンというホルモンの分泌を、血糖値に応じて促進したり、胃腸の働きを調整したり、満腹中枢に働きかけて食欲を抑制したりするお薬です。胃で吸収されるお薬のため、飲み方が特殊で、朝起きてすぐに服用し、その後は30分くらい食事や水分をとってはいけません。(胃の中に食事や水分があると、有効成分の吸収が減ってしまうため、服用後は2時間くらいあけるのが理想)
一錠 7mg 500円
一錠 14mg 1,000円
マンジャロ(注射薬)
糖尿病治療薬として保険適応のあるお薬です。インスリンではなく、GIP/GLP-1受容体作動薬であり、もともと体内に存在するホルモンです。食後に小腸から分泌され、すい臓に運ばれ、そこでインスリンを出すよう働きかけます。食欲を抑える効果があります。インスリンを出すことにより食欲を抑えて食後の高血糖を防ぐことにより体重減少を促します。副作用として吐き気・下痢・便秘などの胃腸症状や冷や汗・手足の震え・動悸などの低血糖症状があります。
上記の内服薬であるジャディアンスやリベルサスでは効果が不十分の方、内服薬が飲みにくい方などが対象となります。
使い方は週一回自分で注射します。最初は来院して頂き、自己注射の方法を学んで頂きます。注射薬のみの処方は致しません。
マンジャロは2~8℃で冷蔵保存していただく製品です。冷蔵庫が使用できない場合、21日間まで、遮光の上、30℃以下の室温で保存することが可能です。なるべく早く使用して下さい。冷凍した場合は使用しないでください。
2.5mgより開始し、状態をみながら増量していきます。維持量は5-10mgが目安です。
副作用がでた場合は、投与を中止して医師に相談して下さい。
マンジャロ(2.5mg)1本 5,000円
マンジャロ(5mg)1本 8,000円
マンジャロ(10mg)1本 13,000円