▷院長ブログ「「糖質が見える!」(大正製薬株式会社)」2019/10/19(土)
糖尿病
糖尿病とは最も重要なエネルギー源であるブドウ糖を細胞の中に取り入れられず、血糖値が高くなる病気です。血糖値を下げるホルモンであるインスリンの不足やはたらきが悪くなることが原因で、慢性的に血液中のブドウ糖濃度が異常に上昇するため、尿から排泄されます。
糖尿病は、よほど重症にならない限り、自覚症状がほとんどないのが特徴です。サイレントキラーといわれています。定期的な検査で身体の状態を知って、医師による的確な治療を行うことが必要です。
以下のような症状のある方は医師の診察をお早めにお受けください。
- のどの渇きを感じる方
- 尿の量・回数が多い方
- 体重が急激に減った方
- 全身がだるく、疲れやすい方
- 目がかすむ方
- 尿から甘い臭いがする方
- 立ちくらみのする方
- 手足のしびれがある方
- 勃起不全にお悩みの方
- 月経異常のある方
また、以下に当てはまる方も、お早めの受診をおすすめいたします。
- 会社などの健診で血糖値が高い、あるいは尿糖がみられるといわれた方
- 医療機関での再検査を勧められた方
- 他の医療機関に通院中だが上記の症状が改善されない方
糖尿病の原因・分類
糖尿病は以下のように大きく4つに分類されます。
- 1型
- 2型
- その他の特定の機序、疾患によるもの
- 妊娠糖尿病
1型糖尿病は、遺伝や環境が原因と考えられています。膵臓のβ細胞が破壊されてしまい、インスリンが全く分泌されなくなってしまいます。インスリンを補給しないと致命的になるため、インスリン注射を欠かすことはできません。
2型糖尿病は糖尿全体の90%程度を占めており、食習慣の偏りによる内臓脂肪の増加・飲酒・喫煙・運動不足・肥満などで発症する可能性が高くなります。また、生活環境、ストレス、加齢なども原因といわれています。インスリンが効きにくくなったり、分泌のタイミングが悪くなったりします。
糖尿病の恐ろしさ
糖尿病は自覚症状のないまま進行していきます。一度発症してしまうと、糖尿病そのものが治ることはなく、血糖値のコントロールが必要になります。
血糖値は食事のたびに変化します。これを『血糖変動』といいます。通常は急激に変化しないようにコントロールされていますが、糖尿病患者さんではその変動が急激に起こっており、血管へダメージをあたえることがわかっています。最近メディアでは食後高血糖のことを「血糖値スパイク」と呼び、一般の方の認識も高まりつつあります。
食後などに急激に血糖値が上昇すると、例えば血管内部にダメージを与えます。これが繰り返されることで心筋梗塞や脳梗塞が起こる可能性が高まったり、糖尿病や認知症、がんになるリスクが上がったりすることも示されています。
糖尿病で一番恐ろしいのは糖尿病そのものではなく、重症な合併症が全身にあらわれるということです。
途中失明や人工透析導入の原因の第1位が糖尿病です。 足の指がくさってしまい切断せざるを得なくなることもあります。感染しやすくなり、傷の治りも悪くなります。脳梗塞や心筋梗塞にもなりやすくなります。
糖尿病の方は以下のリスクが高まっています
高血糖の状態が長い期間にわたって続くと、全身の血管の弾力が失われ、徐々に血管が損傷し、動脈硬化が進んでいきます。特に細い血管が多い場所に損傷が起こりやすく、眼、腎臓、神経系などで合併症が引き起こされます。
一般的には約10~30年後に以下のような合併症が現れることがあります。
- 糖尿病性網膜症
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性神経障害
- 糖尿病性足壊疽(とうにょうびょうせいあしえそ、下肢の切断に至る可能性がある)
- 脳梗塞
- 狭心症・心筋梗塞
- 各種感染症(肺炎、膀胱炎、腎盂炎、皮膚炎、歯肉炎など)
糖尿病の重大な三大合併症
合併症の中でも眼、腎臓、神経系で引き起こされる合併症を三大合併症と呼び、特に注意が必要です。
1.糖尿病性網膜症
血行障害によって眼底から出血し、視力が低下し、最悪の場合は失明してしまうこともあります。中途失明の原因の多くは糖尿病によるもので、視覚障害者の6人に1人は糖尿病による失明です。
2. 糖尿病性腎症:腎臓に起こる合併症
腎臓の働きが悪くなり、体内に老廃物が溜まっていきます。その結果、「尿毒症」や「腎不全」などの生命にかかわる重い症状を引き起こします。現在、人工透析導入者の40%が糖尿病性腎症であるといわれ、透析導入者の中でもっとも多い原因になっています。
3.糖尿病性神経障害
糖尿病神経障害は、三大合併症のなかで、最も頻度が高く、症状も早期に現れます。手足の血行が悪くなり、痛みやしびれが生じます。悪化してしまうと下肢切断の危険性もあります。
糖尿病は自覚症状がないまま進行していき、重大な合併症を引き起こします。しかし、医師の指導のもと、適切な食事療法、運動療法、薬物療法を続けることで血糖値をコントロールし、合併症を予防することができます。 糖尿病治療には早期発見・早期治療が大切です。早目に医療機関を受診してください。
糖尿病の検査と診断
糖尿病の検査方法には、尿糖検査、血糖検査、をはじめ平均血糖値を見る検査や血圧など様々な検査を総合して診断します。
尿糖検査は、尿に糖が混ざっていないか、調べる検査です。
血糖検査は、空腹時血糖値、随時血糖値、食後2時間血糖値、75g経口ブドウ糖負荷試験(75g OGTT)による血糖値などを測定し診断します。
血液検査で抗GAD抗体を測定し1型と2型糖尿病の鑑別をすることも重要です。1型の場合は、インスリン注射が基本になります。
近年、すぐれた医療機器が登場し、血糖測定機器には種類が増え、これらの測定機器で血糖値のトレンドを知ることができるようになりました。食後高血糖や急激な血糖変動の存在が明らかとなり、治療が最適化される患者さんが増えると予想されます。
CGM (Continuous Glucose Monitoring) |
FGM (Flash Glucose Monitoring) |
SMBG (Self Monitoring Blood Glucose) |
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測定対象 | 皮下組織間質液中の 糖濃度を測定、血糖値に換算 | 皮下組織間質液中の糖濃度を測定、血糖値に換算 | 血糖値 |
機器のディバイス名 | メドトロニック iPro2 (日本メドトロニック)など |
FreeStyleリブレ (アボットジャパン) |
グルテストアイ (三和化学研究所)など |
測定方法 | ・センサーとデータ記録器を腹部などに装着する。 ・ 数値はデータ記録器に自動的に記録される。 |
・上腕後ろにセンサーを装着、数値はセンサーに自動的に記録される。 ・リーダーをセンサーにかざしてスキャンさせることにより、使用者自身で数値読み取りが可能。 |
・指先などから採血し、センサー(血糖測定電極)に吸引させる。 ・モニターにより、使用者自身で数値読み取りが可能。 |
測定可能期間 | 3~6日間 | 最長14日間 | 1回 (測定毎に交換) |
測定頻度 | 測定は自動的に持続、5~10分毎(機種による)の平均値が記録される | 測定は自動的に持続、15分毎の値が記録される | 使用者による測定時 |
機器各社ホームページより(2018年9月現在)
糖尿病に必要な治療
糖尿病の治療法には、食事療法と運動療法、薬物療法があります。
食事療法では、それぞれ個人の身体活動量に合わせた食事をし、自分に合った分量の食事で必要な栄養素を全て摂取するようにします。
運動療法では個人に合わせた運動メニューを作成し、実行します。
運動によってブドウ糖や脂肪酸の体内での利用を促進させ、血糖値の低下およびインスリン抵抗性の改善を行います。但し、合併症がある場合、薬剤で治療している場合は運動が制限されることもありますので、運動の種類や時間・回数等、必ず医師の指導の下、適切な運動を心がけてください。
薬物療法では、経口血糖降下薬とインスリン注射などがあります。
糖尿病治療は日々、研究が進み、新たな治療法が生まれています。経口血糖降下薬とは血糖値をさげるための飲み薬のことです。2型糖尿病の治療はこの治療からはじめます。 DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬など、低血糖発作が生じにくく、安全な薬剤が開発されています。 一日一回の内服が基本ですが、一週間に一回飲めばよい薬もあります。いくつかの成分が混合された配合剤も開発されています。
インスリン注射は、足りないインスリンを体外から補充する注射です。1型糖尿病の方には、必須となります。その効果の出る速さから超即効型、即効型、中間型、持効型、混合型に分類されます。インスリン注射は皮下注射(皮膚の薄いところと筋肉の間に打つ)なので筋肉注射に比べて、痛みが少ないと言われています。
薬物療法には、肥満促進や他の薬との兼ね合いなど、注意しなければならない点が多数あります。医師の指示に従って、正しく服用していくことが大切です。
早期発見・早期治療で合併症を予防しましょう
糖尿病は血糖値のコントロールを行うことで、合併症を予防することができます。糖尿病は血糖値を上手にコントロールしていけば、恐ろしい病気ではありません。初期のうちに治療を開始することが大切ですので、早期発見・早期治療のために、お早めに医師の診察を受けることをお勧めします。
糖尿病の治療は、血糖値のコントロールが鍵となります。食事療法、運動療法や薬物療法によるバランスのいい血糖値の管理が必要です。当クリニックでは、合併症なども考慮し、総合的に血糖値のコントロールを行っていきます。
また、糖尿病治療は、生活全般に関わってくることですので、治療には患者さんひとりひとりのご協力が不可欠です。そのため、患者さんに納得していただけるまで丁寧に、わかりやすく、何度でも説明いたします。